山岸正裕市長【後編】市役所とは、「市」民の「役」に立つ「所」

「まちはまるごと博物館」のスローガンのもと遂行されたエコミュージアムによるまちづくり、2007年アメリカの経済誌フォーブス電子版にて「世界で9番目にクリーンな都市」と評価されたエコ環境都市の推進、予想来場者数を大きく上回った「はたや記念館ゆめおーれ勝山」のオープンなど、様々な政策を打ち出しまちに活気を生んできた山岸市長。

その中でも、市役所の行財政改革・組織育成は他地域からの高い評価を得ています。年功序列による人事制度や評価制度を見直し、市民へのサービス精神を吹き込んだ山岸市長のスピリットはどこからきているのか、お話を伺いました。

気持ちのよい挨拶の積み重ねが、市民と行政の距離を縮めてくれる

職員と談笑する市長。「おはようございます」「おつかれさまでした」の爽やかな挨拶の徹底と、ヤル気のある職員を支援する人材育成に積極的に取り組んでいます

── 勝山市役所の明るく元気な挨拶は名物の一つになっていますが、これには徹底した市長の指導があったと伺いました。

私も、市長より一般市民であった期間のほうが長いですから。若い頃からずっと市民目線で市役所を見てきました。それをふまえて、市役所は常に人が来てくれるところだから、お客様に対する接客や応接は、きっちりとルーティーンを作って守っていかなくてはならないと常々感じていました。職員には「市役所は市民のお役に立つところ」だと言い続け、そのような気持ちで市民と接しましょうということを推進してきました。

── その気持ちが職員皆さんの「挨拶」に表れているのですね。

忙しい時間を割いて市役所を訪れる人に対して、にこやかな笑顔で「おはようございます」とお迎えし、「おつかれさまでした」とお見送りをする。その少しの意識の積み重ねが、市民と市役所の距離を縮めることにつながります。今は皆が笑顔で挨拶をしてくれるようになり、双方の接点が非常によくなったと感じています。私たちが目指しているのは、「挨拶日本一の市役所」です。

住民の息吹が聞こえる距離にいられることは、小さなまちの大きな武器

自治区をまわって市民の声を直接拾うよう心がけているという山岸市長。人口25000人を武器と捉え、直接民主制に挑みます

── 市政を行うにあたり、市長が意識されていることはありますか?

市長の立場に立ってみると、市長だけが頑張って仕事をしてもうまくいかないんですよね。職員も市長が気に入る仕事だけをしているのではだめなんです。やはり原点は市民。そのような意味を込めて、地方自治体を「基礎自治体」と呼んでいます。

人口25000人のまちですから市民と行政の接点が濃く、とても密着度があります。住民の息吹、息の呼吸が触れ合うくらいの距離にいるので、それを1つのメリットと捉え、県や国の役人にはできないことをしようとしています。こういうことを言っていると、全てがうまくいっているように思われるけど、それはもちろんまだまだな面はありますよ。だけどそういうふうに常に心掛けています。

── 市長が求める職員像とはどのようなことですか?

職員も一人の市民であり、地域住民です。地域の行事にはなるべく参加をして市民が求めているものをキャッチするようにと話しています。現場の要望を聞けない職員、言われたことしかできない職員は市民のためになりません。自分で創意工夫をこらして市民目線で自ら企画発案してくれるヤル気のある職員には、全力で支援をしたいと考えています。

ふと振り返ったときに「こんなに素晴らしい故郷があるのか」と思ってもらえるまちに

バドミントンでリオオリンピックに出場した勝山出身山口茜選手の壮行会

── どの地方でも定住人口や交流人口の減少が悩みとなっていますが、そのような地域課題に関してどうお考えですか。

勝山市は私たちの子どもの頃から今までの間、出て行った人にあまり振り返られなかった町だったかもしれません。だけど振り返ったときに、こんな素晴らしい故郷があるのかということを主眼に、16年間まちづくりをしてきました。まだまだ未完成で進行形ですが、ようやくそれができ上がってきたと思っています。

「勝山っていいな」と元から思ってないと振り返らないので、子どもたちには勝山の自然や文化の魅力を一生懸命伝えたり体験させながら育てています。最近では、勝山が好きだとか、一回は外へ出るけれど勝山に帰ってきたいと言う小中学生、高校生が非常に多くなってきています。これは将来の定住に繋がります。ですから行政としては、若者が帰ってきやすい政策、帰ってきたらメリットがあるような制度、雇用もしっかり生まれるような、そういうまちづくりをさらに進めていきたいと思っています。

子どもたちに勝山の魅力を直接伝え、伝統や文化を継承していきます

── 勝山をより住みやすいまちにするために、ハード面で具体的に工夫している点はありますか。

まずはインフラの整備。安全安心については大きな災害もなく、降雪対策として融雪装置も多数設置、屋根雪は電気や灯油ボイラーで融かして落とす装置の助成も広げています。安心して現代的な生活ができるだけでなく、自分が好きであれば様々なものが楽しめるというまちづくりを進めてきました。

大切なのは、市民が恐竜を愛して大事にしているという事実

恐竜を通して市民が一つになったり観光客が喜んでくれることが何より嬉しいと語る山岸市長

── 今回、F×Gの第一弾プロジェクトとして「ホワイトザウルス リボーン作戦」が発表されました。市長は地域におけるふるさと納税の意義についてどうお考えですか?

ふるさと納税の概略から言うと、いい制度だとは思います。ただ、ショッピングの代わりという形の方に傾斜していくと、ちょっと本来の目的と違ってきてしまうので、そういう意味では節度を持った程度の返礼品に留めたいですね。

── では、勝山市における「ホワイトザウルス」とはどのような存在なのでしょうか。

ホワイトザウルスは市民にとって、恐竜をより身近に感じることのできるシンボリックな存在だと思います。大切なことは、地元の人たちがこれを愛して大事にしてくれていること。地元の盛り上がりがさらに人を呼び、交流からさらに喜びが出てきて。これは素晴らしいことだと思います。勝山に来たお客様がモニュメントを目にして喜んでいる写真や映像を見ると嬉しいですし、すごい効果ですよ。それほど恐竜というのは、人にアピールする、子どもたちも含めて大人も何かワクワクするような要素を持っているんだなと思います。

── 今回の返礼品にはF×G限定の品もいくつかあります。

恐竜ということで寄附をしてくれるのだから、そのお返しとしてどこにも売ってないプレミアム的なものを。高級感だけのプレミアムではなく、勝山市と関わりを持ったからこんな素晴らしいものもらえたんだっていう、全国の恐竜ファンに心に響くようなものを差し上げたいと思います。

「発酵」の次は「発散」。まちづくりは次のステップへ

ホワイトザウルスのお披露目で、子どもたちを前に話をする山岸市長。ホワイトザウルスは子どもたちにとって「故郷の風景」です

── 最後に、市民団体からまちづくりの積極的な提案を募集する「わがまち魅力発酵事業」も来年度で締めくくりとなりますが、その先の勝山市についてどのような未来を描いておられますか?

「発酵事業」まで来たから次は何ですか?って、市民や職員からよく聞かれるんですよ。次はまた熟慮、熟考しなくてはいけませんが、やはり「発散」ではないでしょうか。様々なものをずっと熟成させてきて、発酵させて、生まれるべきものがぐつぐつと相当な限界点まで達してボンと発散するというような、今はそういうイメージでおります。

勝山は、勝山左義長まつりという伝統的な祭りや、白山信仰の拠点として栄えた1300年の歴史を誇る白山平泉寺、日本屈指の恐竜化石の数々、城下町の趣が色濃く残る街並みなど、風土の中で長年育まれてきた文化遺産が「生きた歴史」として日常に息づいています。今まで継承してきた様々な歴史や文化をしっかり受け継いで、未来へ発展させること。そうすることで、故郷への愛着と誇りを醸成したいと思っています。

「愛着と誇りがないところにふるさと回帰はあり得ないし、地方創生もない」という強い思いで、これからも市政に真摯に取り組んでいきたいです。

(Text:齋藤めぐみ)